中局この一手①「天才が見落とした好手」

局面紹介

今回からプロの対局を題材とし、中局(中盤戦)でのカギとなった一手を紹介していきます!

初回となる今回は、今月中国で行われた「2019年第08届碧桂园杯全国象棋冠军邀请赛」という大会の決勝4番勝負の第2ラウンドで登場した局面を紹介します。

この対局、紅は郑惟桐さん、黒は王天一さんで両者言わずと知れたシャンチー界のトッププレイヤーですね。

局面は25回合、手番はです。

皆さんなら次の一手どう指すか考えて見てください!

解説

正解は「馬4進2」です。

一見砲で車が取られそうですが、馬2進3とジャン車取りをかければ駒得となり黒勝勢。

砲八平三と馬を取っても同様の手順で駒得になるので黒勝勢です。

なので紅としてはなんとか他の上手い順をひねり出したいところですが、馬七進六と交わしても車2平4、砲八平三、馬2進3から駒損になってしまいますし、他に色々考えても互角に戦える順は見当たらないのです。

一応紅として最善なのは素直に馬七進八と取って車2進5と進む順ですが、駒損はないものの紅の砲と車が黒の車に牽制された格好で、これを紅から解除する手立てはありません。

そのためはっきりと黒優勢ですし、王天一さんほどの棋力があるトッププロであればこの差を勝ちに持って行くことはそれほど難しくはないでしょう。

ただ実戦で王天一さんはこの手を指さず、「馬7退8」と素直に馬を引きました。

この手は自然ですし悪手ではないのですが、はっきりとチャンスを逃した格好です。

この対局は動画でUPされていたのでそちらも確認したのですが、王天一さんの持ち時間は10分以上あり、時間に追われたということもなさそうなので、単純に見落としたようです。

普通に人なら復盤して「こんな手あったんだ」レベルの好手だと思うので見落としても仕方ないですが、「宇宙人」と呼ばれるほど異次元の強さを誇る王天一さんでもこんな見落としがあるんですね。

動画でも解説陣はこの手に気づいており、王天一さんが指さなかったため「えっ」ってなってました。(中国語分からなくても伝わりました笑)

(該当部分は動画の1時間47分~48分あたりです)

結局この対局は馬7退8、砲八平九から車交換になり、150回合を超える熱戦の末、和で終局しました。

最後に

王天一さんはこの決勝4番勝負の初戦で優勢の内容を逆転負けしており、その悪い流れが2戦目のこの見落としに繋がってしまったのかなと個人的には思ったりしています。

4番勝負は4局目で王天一さんが意地を見せ1勝1敗2和とタイに持ち込んだのですが、最終的には決着をつけるための超快速戦で負けてしまい、郑惟桐さんの優勝となりました。

そう考えると、2局目を和にしてしまったのは王さんとしては少し痛かったですね。

ただ内容はどの対局も非常にレベルが高く素晴らしいものばかりだったので、皆さんにもぜひ並べて鑑賞して頂きたいです。

xiangqimatesにも日本語で記事が上がっているので、そちらもぜひご覧ください!

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コメント

  1. ぽたぽた焼美味しい より:

    こんにちは!この試合の決勝戦は本当に全て名局でしたね!!^^
    今年最後の記事、ありがとうございます!!
    来年も記事のアップを楽しみにしています(*’▽’)

    • 運営者 より:

      コメントありがとうございます!
      おっしゃる通り本当にレベルの高い名局ばかりでした!
      12月中にアップしようと思っていたので、なんとかギリギリ間に合わすことができて良かったです。
      2020年もよろしくお願いします!