掲棋(うつぶせシャンチー)の布局理論(研究所オリジナル)①

今回からは、掲棋(うつぶせシャンチー)の布局理論を紹介します。

布局理論といっても管理人が試行錯誤の末たどり着いた研究所オリジナルのものです。

そのため違う見解などもあるかと思いますが、参考にして頂ければ幸いです。

初手は兵七進一(兵三進一)がベスト

まず掲棋を指す上で最初に何を動かすのが最も良いのかというのは誰もが気になる点だと思います。実際ルールを知ったあと私が初めて指すときも非常に迷いました。

ただ今はこれについてシャンチーの棋譜でいうところの「兵七進一(兵三進一)」がベストだと考えています。

少し長くなるかもしれませんが、なぜこれがベストだと考えたかをこれから説明しましょう。

初手の条件と候補

まず掲棋の初手として有力である条件を考えたのですが、次に敵陣の駒を狙いやすい(取りやすい)というのが重要であると考えました。これは敵の裏になっている駒を取ることは掲棋を優位に進める上で非常に重要だからです。

そう考えた場合、候補は兵を進める「兵五進一」「兵七進一(兵三進一)」「兵九進一(兵一進一)」と砲を進める「砲八進四(砲二進四)」「砲八進三(砲二進三)」の5つに絞られます。

ただこれらの中には明確な欠点を持つものがあります。

まず「兵五進一」と動かした場合、それが運良く車だったと仮定します。その状況では次に黒が「象3進5(象7進5)」のように中卒を下から支える手を指すことが有力でしょう。その場合もし動かして表にした駒が砲であったら、せっかく初手で出した車が砲で殺されてしまうのです。

砲が出る確率は2/15で約13%と無茶苦茶高い訳ではありませんが、10回に1回以上こうした形で運良く出た車が殺されてしまうと考えると明らかに初手としては欠陥でしょう。

また「兵九進一(兵一進一)」と動かした場合、それが馬だったと仮定します。その状況で次に相手が馬のいる筋の端卒を動かしてそれが卒だった場合、せっかくの馬が簡単に死んでしまうのです。

これは車が殺されるほど致命的ではありませんが、相手は卒が出れば良いので確率は5/15で約33%と高くなっています。

実戦的にはこのように馬が詰んでしまった状況では、少しでも馬を助けるために「砲八進七(砲二進七)」と駒を取って馬の退却する進路を確保するのが考えられます。ただこれ自体はかなりギャンブルプレーですし、どちらにせよ馬が引いて逃げる価値の低い一手を指さなければなりません。

そう考えるとこちらも初手の候補からは外れそうです。

「砲八進三(砲二進三)」もイマイチ

それでは残った「兵七進一(兵三進一)」「砲八進四(砲二進四)」「砲八進三(砲二進三)」を引き続き考えて見ましょう。

この中で「砲八進三(砲二進三)」はちょっと考えただけでもあまりパッとしないのが分かると思います。

というのも、強い駒である車・砲・馬のいずれの駒が表に出た場合でも、次に相手の根のない卒を取ることができないんです。士が出た場合に限っては卒の両取りとなるため「兵七進一(兵三進一)」「砲八進四(砲二進四)」よりも良い働きが期待できますが、先ほどの難点を相殺できるほどの大きなメリットではないでしょう。

というわけで候補は「兵七進一(兵三進一)」「砲八進四(砲二進四)」の2つに絞られました。

「兵七進一(兵三進一)」と「砲八進四(砲二進四)」の比較

「兵七進一(兵三進一)」と「砲八進四(砲二進四)」どちらも有力そうなので、それぞれ表にして駒別で働きを評価してみました。

評価は5段階評価で高い方から☆◎○△×の順でつけています。

評価の点数と簡単な目安は以下の通りです。

(5点) 絶好手 超ラッキー

(4点) 好手 ラッキー

(3点) 普通の手 まあまあ

(2点) イマイチだが一応意味はある アンラッキー

×(1点) 無意味な手 超アンラッキー

評価は私の経験から判断した主観なので、人によっては少し感覚が違うところもあると思います。

ただかなり悩みながら慎重に査定したので、恐らく大きく外していることはないでしょう。

まず上の「兵七進一(兵三進一)」の特徴としては、何が出ても無意味にはならないという点が上げられます。

つまり低評価の馬・士・兵が出た時でさえ、指さないよりは指したほうがマシという手になります。

また車は相手が運良く卒を守った場合にすぐさま別の卒を狙いに行けるという点で砲八進四よりも優れているので、最高評価にしました。

また砲の車との交換は次の記事でも詳しく解説しますが、中央や両端に移動することで最大3回の駒得チャンスが生まれます。

これはほぼノーリスクかつそれなりの確率で駒得ができるので、砲が出た場合も大当たりと言って良いでしょう。

次に「砲八進四(砲二進四)」の特徴ですが、最も出現確率の高い兵だった場合の評価が高いという点が上げられます。

最も弱い駒で相手の裏返った駒3つに同時に取りをかけられるのは非常に強力で、「兵七進一(兵三進一)」の時よりも働きは格段に良くなっています。

ただこのように砲八進四が兵だった場合には、相手はギャンブルですがやむを得ないので砲2進7と駒を取り、以下車九平八、卒3進1と進む可能性が高いです。この卒3進1がもし砲や車で逆に駒取りをかけられた場合には受けた後で卒1進1と逃げられてしまいます。また卒や士など弱い駒であれば問題なく兵八平九と取ることができもちろん紅の優勢ですが、所詮は兵なので端にあるとその後の展開に活用するには時間がかかってしまいます。

実はこの兵の評価を○と◎のどちらにするかかなり悩んだのですが、こうしたことを総合的に考慮して○と◎の中間としました。

また馬と相が出てしまった場合には、全く役に立ちません。

若干相手の動きを牽制しているという側面はありますが、狙われて取られやすいという点を考慮すると、ほとんど一手の価値はないでしょう。

そのため砲八進四が馬か相だった場合に相手が卒7進1と動かせば、それが何であろうと本来ある紅の先手の利は黒に移ってしまうことになります。

こうしたことを整理すると、「砲八進四(砲二進四)」では馬か相が出てしまうと先手の利がなくなってしまうという点、そして兵が出た時に砲2進7とされる可能性が高いという2つの点で、「兵七進一(兵三進一)」に比べギャンブル性の高い指し手ということが出来るでしょう。

評価を元にした両者の指し手の価値の合計を計算すると、「兵七進一(兵三進一)」は44点「砲八進四(砲二進四)」は41.5点となりました。

微差なので評価のつけ方によっては両者がトントンになったり、差が開いたりするかもしれませんが、「砲八進四(砲二進四)」のほうがはっきり優れているという結果にはならないでしょう。

また先ほど書いたように「砲八進四(砲二進四)」はギャンブル性が高いので、どうしても運の要素が強くなり安定して実力を発揮し結果を残すという点ではあまりオススメできません。

このあたりは個人の性格や掲棋とどう向き合うのかといったことにも関わってきますが、当サイトでは評価値や手の性質を考慮して「兵七進一(兵三進一)」初手の最善手と考え推奨しします。

長くなりましたが、次回は「兵七進一(兵三進一)」と指した場合の具体的な進行を紹介していきます。

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