質問を頂いたのでお答えします(追記あり)

昨日お問い合わせページから質問を頂きました。

管理人はサボり癖があるのでなかなか更新が滞りがちですが、シャンチーに興味を持って当サイトを訪れてくださる方がいるということは非常に嬉しいですね。

直接メールでお答えしようかとも思ったのですが、回答がちょっと長くなりそうなことと、同じような疑問を持つ方が他にもいるかもしれないということを考え、こちらの記事にて解説させて頂ければと思います。

頂いた質問

頂いたのは下の残局問題についてのご質問でした。

まずは皆さん紅がどうやって勝つか考えて見てください。

この問題はあるシャンチーアプリの中にある残局問題です。

模範回答は以下のような手順になります。

  1. 砲一平八 車9平2
  2. 砲八平三 車2平7
  3. 砲三平八 車7平2
  4. 砲八平三 車2退6(車2平7以外ならなんでも可)
  5. 砲三進六 (紅勝)

皆さん解けたでしょうか?

頂いた質問は、途中で黒(CPU)が砲の殺を防ぐ手を止めます(上の模範回答だと車2平7を止める)がどうしてですか?

というものでした。

これはまさしくこの問題のカギとなる重要な要素です。

またこれに関連して、紅の砲と黒の車がいなくなった形である「単兵単士単相対双士」で紅は勝てますかという質問も頂きました。

確かに当サイトでも「単兵対双士」の記事は書いていませんでしたね。

それではこの2つの質問について、これから出来るだけ詳しく解説していこうと思います。

1つ目の質問の答え

メインとなる1つ目の質問の答えですが、これはズバリ千日手(同一手順の繰り返し)の禁止事項だからです。

シャンチーでは基本的に、相手の1枚の駒を取るぞ取るぞと同じ手順で追いかけ回すのは反則となっています。

ここで先ほどの問題の局面をもう一度見てみましょう。

1回合紅の砲一平八も2回合の砲八平三も、ともに殺(将棋でいう詰めろ)です。

そしてこれに対応する黒の受けの手は、それぞれ車9平2と車2平7しかありません。

ただこれらはいずれも砲取りをかける手になっています。

そのため紅は2回合以降砲八平三、砲三平八と繰り返しておけば、対応する黒は必然に車9平2と車2平7を砲取りをかけ続けることになるんです。

しかしいくら殺でやむを得ないとはいえ、黒は千日手のルールがあるので途中で手を変えなければなりません。

その隙に紅が詰まして勝ちという問題でした。

という訳で黒(CPU)が途中で指し手を変えるのも、ルール上禁止事項だからということになります。

この問題については以上の説明で終わりですが、実はこの千日手というのはシャンチーにおいて非常にやっかいな問題です。

千日手に関する最低限の基本事項については以前の記事でも紹介しているので、そちらをご覧頂ければ対局中それほど困ることはないと思います。

ですがルールを厳密にしっかり理解しようとすると結構大変で、例えば今回の同一手順での取るぞの繰り返しについても、王様(帥・将)と兵卒はOKというように微妙に違ったりする部分があるんです。

幸いシャンチーの場合は大会などでも反則の千日手を繰り返したからといって、すぐに負けになるわけではありません。

審判員を呼んできて局面を見てもらい、「この場合は紅が手を変えなさい」というような指示を受けた上で対局を再開するという流れになります。

そのため細かなルールを最初から完全に覚えようとするのではなく、遭遇した千日手のパターンをその都度覚えておくというのが、シャンチーを嫌いにならない現実路線でしょう。

ちなみにシャンチーのアプリなどでは、開発者がこの千日手のルールをしっかり反映しておらず、反則の千日手をコンピュータが永遠に繰り返してくるなんてことも時々あります。

もし周りに詳しい人がおらず、「この場合はどうなのか?」と困った方がいれば、遠慮無くお問い合わせページから質問してください。

また当分先にはなりそうですが、いつかは当サイトでも千日手のルールを全てまとめた記事を作りたいなと考えています。

2つ目の質問の答え

「単兵単士単相対双士」の残局を考える前に、「単兵対単士」の残局を思い浮かべてみましょう。

「単兵対単士」の残局は勝つのが難しい残局とされています。(細かい解説はこちら

これを前提に考えると、「単兵単士単相対双士」は黒の守りの士が1枚から2枚に増えているので、勝つのは相当難しいことが予想できますね。

実際この残局は基本的に必和です。

ただ特定の状況下でだけは例外として勝つことができます。

それは以下の2パターンです(左右対称形も同様)。

黒の手番だとしたら動かす駒がないため負けですし、もし紅の手番だったら帥五進一と手待ちをすれば紅の勝ちとなります。

またこの残局に関しては紅側の士や相はあってもなくても関係ありません。

そのため通常の状況下では「単兵(単士単相)対双士」はとなりますが、今回の残局問題の局面から車と砲を除いた形は、例外パターンに当てはまるので勝てるということになります。

最後に

少し長々と書いてしまいましたが、疑問を解消できたでしょうか?

皆さんも千日手のパターンに限らず、シャンチーに関する疑問質問等があれば気軽にコメントやお問い合わせして頂ければと思います。

更新のモチベにもなるので、ぜひぜひお待ちしております。

追記

この記事を投稿したあと、読者の方から鋭い指摘を頂きました。

それは私が上で紹介した模範解答(自分で考えた)ではなく、こちらの解答が正解ではないかというものです。

その解答は以下のような手順でした。

  1. 砲一平九 車9平1
  2. 砲九退一 車1進1
  3. 帥五進一 車1退1
  4. 帥五進一 車1進1
  5. 士四進五 車1退1
  6. 士五退六 車1進1
  7. 帥五退一 車1退1
  8. 帥五退一 車1進1
  9. 砲九平三(紅勝)

まずこの手順の解説をします。

先ほど上で紹介したように、この盤面から車と砲が消えると紅の勝ちです。

そのため紅が砲一平九、砲九退一としたあと、黒は車で砲を取ることはできません。

また黒の車が一番左の筋から離れると(例えば車1平2など)その瞬間に砲九進七で紅の勝ちになります。

紅は黒の動きが制限されている間に自陣を上手く整備して、最終的に砲九平三とすれば黒は次に砲三進七を防ぐことが出来ないので、これにて紅の勝ちが確定です。

なお帥が上がったりする自陣整備の意味が分かりにくいかもしれませんが、仮に3回合で紅が砲九平三とすると、黒は車一平三、帥五進一、車三退一、帥五退一、車三平七で黒に受けの手段が存在します。それをうまく防ぐための配置転換が3~8回合での紅の指し手の意味でした。

確かにこちらの解答のほうが芸術性が高いですね。いかにも模範解答といった感じの印象を受けます。ただ少し手順が長く難しいという欠点もありますね。

私は「どっちも正解なら短くて簡単なほうが良くないかな?」と思ったのですが、指摘してくださった方によると、私の解答だと中国ルールでは和になるかもとのことでした。

その後その方にお願いして中国のちゃんとした審判員の方に確認してもらったのですが、やはり私の解答では世界ルールだと勝ちだが中国ルールではとのことでした。

したがって先ほどの追記の解答が模範解答としては適切ということになります。

「世界ルール」「中国ルール」についてはこのサイトで一度も触れていなかったので簡単に紹介すると、もともと中国で使用されていて今でも使われているのが「中国ルール」で、その後世界にシャンチーを普及するためにルールを簡略化したのが「世界ルール」になります。

ルールを簡略化というと全然違うゲームになりそうですが、先ほどもややこしいとお伝えした「千日手」に関する部分の扱いが少し変わるだけなので、ゲーム自体は同じシャンチーです。

両者の違いをちゃんと調べたことがないので詳しいことは分かりませんが、中国ルールは世界ルールよりも和になりにくいように設計されていると聞いています。

日本人がシャンチーをする場合は、国内の大会を始め国際大会でも世界ルールが適応されます。

そのため日本人は世界ルールだけ覚えておけば、基本的に全く問題ありません。

そういった事情から、私も中国ルールについて存在は知っていましたが、今まで全く意識したことがありませんでした。

ですが中国留学中の方など中国ルールが適応される環境下の方にとっては、今回の私の解答では間違いとなる危険性がありました。

今回のようにルールの違いによって結果が変わるというのは私自身全く想像していませんでしたし、ご指摘を頂いて非常に勉強になりました。

当サイトでは今後も「世界ルール」を基準に記事を作成していきますが、今後はルールの違いによって結果が変わる場合など(あまり多くはないと思いますが)は注意していきたいと思います。

ご指摘ありがとうございました。

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