今までシャンチーについて駒の動きや基本的なルール、棋譜の取り方などを色々と紹介してきました。
今回はそれらの知識を生かして、最も重要な勝敗の決まり方について解説していきます。
目次
決着の種類
シャンチーの対局の結果は「勝ち」「負け」「和(引き分け)」の3種類です。
「和」は日本語で普通に「わ」と読んで、引き分けを表します。
勝ちと負けは、片方が勝って片方が負けるという意味で分かりやすいですよね。
ただ問題は「和(引き分け)」です。
日本の将棋では滅多にないこともあり想像しづらいかもしれませんが、シャンチーでは割りと普通に和になります。
というのもシャンチーでは取った駒を使えないので、対局が進む中でどうしても盤上の駒だけでは互いに戦力不足という状況に陥ることがあるんです。
そうした場合には和として決着がつきます。
詳しい内容は次の項で説明しますが、現在プロレベルだと3割~4割程度が和として決着がついているようです。
ただあくまで「プロレベル」の話で、アマチュア同士だと指し手にミスが多いので和にはなかなかなりません。
また大会などでは、和は勝ちの半分の価値として扱われます。(もし勝ちが2ポイントなら、和は1ポイント、負けは0ポイント)
なので劣勢になっても諦めず和を狙うというのは、シャンチーにおける立派な戦術です。
勝敗が決まる場合
ここからは具体的な勝敗の決まり方について見ていきましょう!
まずはどちらかが勝ちどちらかが負ける場合の決着のつき方です。
ジャン(王手)をどう回避しても王様が取られてしまう
まず最初に少しだけ用語解説をしますが、シャンチーでは「次に王様を取るぞ」という手(将棋でいう「王手」)のことを「ジャン」と言います。
たとえば下の画像は次に黒の番ですが、紅に馬でジャンをされているので黒は将にかけられたジャンを回避しなければなりません。
この場合は将5平6でもいいですし、車3平4と馬の前に移動して馬の進路を防ぐのでもいいです。
ただ相手にジャンをかけられた際に、どうしてもそれを上手く回避することができない場面が出てきます。
例えば下の画像は、紅が車一進四とジャンをかけたところです。
黒はジャンを回避しなければなりませんが、将は横に行っても意味ないですし、上に逃げだそうにも今度は八路の紅の車で取られてしまいます。
なのでこの状態で詰みとなり、紅の勝ちとなります。
将を実際に取られるまで指すのではなく、この時点でゲームセットです。
次の例はもう少し複雑です。
状況としては、紅が車一進九とジャンをかけたところです。
黒は当然このジャンを回避しなければなりませんが、どう回避できるでしょうか?
将自身が動く将5平6は意味ないですし、車6退1と紅の車の進路を防ぐと今度は紅の馬の進路が開き、馬で将を取られてしまいます。また士5退6だと、今度は紅の砲から見て将が2番目の駒になるので、やはりこれも砲で将を取られてしまします。
つまりどれもジャンを回避できないので、この局面でゲームセット、紅の勝ちとなります。
ちょっと難しい説明になったかもしれませんが、要は確実に王様が取れる(取られる)状況になったら決着がつくということです。
これは日本の将棋と同じ決着のつき方なので、将棋経験者の方はすんなり理解できたのではないでしょうか。
ジャンはかかっていないが、次どう動かしても王様が取られてしまう
シャンチーにはもう一つ決着がつく状況があり、それはジャンはかかっていないけど、次どう動かしても王様が取られてしまう場合です。
これだけだと分かりにくいので、下の画像を見てください。
これは次に黒の手番なのですが、他に駒がないので黒は将を動かすしかありません。
ただ前に横に行っても紅の兵で次に取られてしまいます。
なのでこの画像の状況では、将にジャンはかかっていないものの、次にどう動かしても紅に将を取られてしまうので、紅の勝ちとなります。
もう一つ例を挙げましょう。
下の画像も次は黒の番です。
先ほどよりやや複雑ですが、黒の中央の士と象は紅の砲がいるため動けませんし、将自身も紅の兵がいるため将5平6とは動けません。
したがってこの局面で紅の勝ちとなります。
チェスだとこうした状況では「ステイルメイト」となり引き分けとして扱われますが、シャンチーでは引き分けとはなりません。
勝敗の決まり方としてはおそらくこちらの方が分かりにくいと思うので、ぜひ頭を整理してしっかり覚えておいてください。
投了が最優先
今まで2つの決着のつき方を説明してきましたが、盤上の局面に関係なく最も優先されるのは「投了」です。
「投了」とはどちらか一方が負けを認める行為のことで、これによりまだ詰みの状況でなくとも、その時点で対局終了となります。
もし投了した後に良い手も発見しても、投了の撤回は出来ないので注意が必要です。
なので初心者のうちは劣勢でも早めに投了せず、頑張って最後まで指し続けるのが良いでしょう。
和(引き分け)になる場合
次は和(引き分け)になる場合を見ていきましょう!
双方の合意での和
一般的に和(引き分け)になる場合は、対局者のどちらか一方が和を提案し、相手がそれを受け入れることで成立します。
では具体的にどういった場合に和を提案するのか見ていきましょう。
まずは下の画像ではをご覧ください。
双方激しい戦いの末、盤上には紅の兵1枚しか攻撃の駒が残っていません。
しかし相手は士と象の計4枚で将を守っており、紅の兵1枚では到底詰みの形にはなりません。
もちろん黒は守備に徹するしかなく、紅を詰ますことは不可能です。
したがってこうした局面では、どちらかが和を提案し、相手が受け入れることで和が成立します。
次は下の画像を見てみましょう。
こちらは実際に和になった、中国のトッププロ同士の対局の終局図です。
先ほどよりやや複雑で、紅は兵と車、黒は砲と車が攻め駒として盤上に残っています。
兵と砲の差で一応黒優勢ですが、互いに士と相・象が完全に残っており、大きなミスが出ない限りはどちらも相手を詰ますことができません。
そのためこの局面で和が提案され、成立しました。
もちろん和が相手から提案されても、自分が「勝つチャンスがある」と思えば拒否することも可能です。遠慮することなく、相手にまだ続けたい意思を伝えましょう。
自動限着による和
先ほどは対局者の一方が和を提案し、相手がそれを受け入れることで和が成立しました。
ではどちらかが和を受け入れず、拒否し続けたらどうなるのでしょう?
その場合登場するのが「自動限着」というルールです。
自動限着とは、決められた手数のあいだ盤上から一枚も駒が減らなかった場合に、その対局を和にするというルールです。
たとえば50回合(100手)自動限着の場合、お互いに相手の駒を取らない指し手が50回合続いたら和になります。
何回合で自動限着になるかは大会などの規定によって異なるので、事前にチェックしておきましょう。
千日手(繰り返し)での和
千日手とは、双方が同じ手を繰り返して局面が進まない状況のことを言います。
シャンチーの千日手はちょっと複雑なので次の記事で紹介したいと思いますが、この千日手によって和として決着することもあります。
ここまでで勝敗の決まり方についての説明は終わりです。
ちょっと難しいと思われたかもしれませんが、勝ち方さえしっかりと理解していればあとは対局をしていく中で自然と分かってくると思います。
引き分けに関しては上級者でも判断が悩ましい時があるので、初心者はどうしようもなくなったら引き分けを考えるくらいの気持ちでいれば大丈夫ですよ!