前回の記事では、中砲系の中でも順手砲と列手砲について紹介しました。
中砲系布局の第二弾となる今回は、「屏風馬」と「反宮馬」について紹介します。
屏風馬
屏風馬(へいふうば)は紅の中砲に対し、黒が馬2進3,馬8進7と両方の馬を正馬にする布局です。
黒は正馬で中央の卒を守っているので、紅は砲五進四とすることができませんね。
黒は先に卒が上がったり、車が動いたりと手順前後はありますが、上の画像のように二枚の馬が正馬でその外側に砲がいる形は基本的に全て屏風馬となります。
一応名前の由来は、二枚の正馬の外側に砲がいる形が屏風のように見えるかららしいですが、想像力がないからか個人的にはピンときてません。
そんでもって読み方が一般的な「びょうぶ」ではなく「へいふう」なのは漢音の読みを採用しているかららしいですが、このあたりの事情もよく分かりません。
日本では「北京」を中国語読みの「ベイジン」や日本語読みの「ほくきょう」ではなく、なぜか「ペキン」と呼んだりしますし、このあたりはそんなに気にしても仕方ないかなと個人的には思っています。
話が脱線しましたが、この屏風馬は現代において最も多く指されている布局です。
初心者から上級者、果てはトッププロまで中砲対屏風馬という布局は非常に多く指されています。
しかもそれでありながら歴史は相当古く、清の康熙帝の時代(1661年~1722年)にはすでに「梅花譜(ばいかふ)」という書物で屏風馬は体系化されているそうです。
そんな歴史の古い布局が今でも指し続けられているのは、変化が非常に多様かつ複雑で、研究が進んだ現在でも紅黒がほぼ互角で拮抗していると考えられているからでしょう。。
全てを紹介するのは大変なので、ここでは屏風馬の中でも特に良く指される2つの布局の出だしを紹介します。
まずは一つ目です。
- 砲二平五 馬8進7
- 馬二進三 車9平8
- 車一平二 馬2進3
- 兵七進一 卒7進1
- 車二進六 砲8平9
- 車二平三 砲9退1
これは屏風馬に対し紅が兵七進一と突き、黒が卒7進1と突き返した形です。この形では上の画像のように紅が車二進六から馬を圧迫しにいく展開が多く見られます。
次に二つ目です。
- 砲二平五 馬8進7
- 馬二進三 車9平8
- 車一平二 馬2進3
- 兵三進一 卒3進1
- 馬八進九 卒1進1
- 砲八平七 馬3進2
これは先ほどと違い、紅が兵三進一、黒が卒3進1と突き合った形です。この形では紅が左の馬を辺馬にし、黒がそれを圧迫していく展開が多く見られます。
2枚の画像の局面を見ても分かるように、紅が兵七進一と突くか兵三進一と突くかのわずかな違いでその後の展開が大きく変わっていますね。
このように屏風馬は変化が多く難しい布局ですが、現代シャンチーの本筋ともいえるような大事な布局です。
もしこれからどの布局を勉強しようか悩んでいるならば、とりあえず中砲対屏風馬を勉強しておけば絶対に役に立つでしょう。
反宮馬
反宮馬(はんきゅうば)は紅の中砲に対し、馬2進3、砲8平6、馬8進7の構えで対抗する布局です。
ちょっと分かりにくいと思うので先に基本図を紹介します。
- 砲二平五 馬2進3
- 馬二進三 砲8平6
- 車一平二 馬8進7
上の画像の黒の構えが反宮馬です。屏風馬と似ていますが、砲の位置が少し違いますね。
反宮馬はこれまで紹介した布局よりは歴史は浅めですが、対中砲に対して屏風馬の次に良く指される布局です。
今もトッププロ同士の対局で時々現れますし、アマチュアにも人気の高い布局になっています。
屏風馬と同様に変化が多様かつ複雑で、紅の中砲の攻めに対する反発力があるとされています。
色々変化はありますが、ここでは反宮馬の良く指される形を一つだけ紹介したいと思います。
- 砲二平五 馬2進3
- 馬二進三 砲8平6
- 車一平二 馬8進7
- 兵七進一 卒7進1
- 砲八進四 象3進5
- 馬八進七 士4進5
紅は二つの砲で中卒を狙いに行き、黒は士と象が上がってそれに備えているという状況です。このあと紅は砲八平五と卒を取って攻め込み、以下難しい戦いが続きます。
中砲系布局まとめ
ここまで「順手砲」「列手砲」「屏風馬」「反宮馬」と4つの布局を紹介しました。
大きくまとめると、「順手砲」と「列手砲」は紅の中砲に対し黒も中砲で激しく攻め合う戦い方で、「屏風馬」と「反宮馬」は紅の攻めに反発するという戦い方です。
現在のプロレベルの研究では後者の「屏風馬」や「反宮馬」のほうが有力とされていますが、アマチュアレベルではどれを使っても全く問題ないでしょう。
また中砲に対する黒の指し方はこれ以外にも色々あります。
マイナーな布局はだいだいどれも研究して正しく指すと紅が良くなりやすいですが、紅も初見では対応がなかなか難しいことが多いです。
なのでアマチュアは指すけどプロはほとんど指さない布局なんてのもあります。
いずれにせよ全体的に中砲系の布局は研究が進んでいるので、布局の知識や開局の力の差が形勢に現れやすいです。
初心者の方が中砲を指したり、黒を持って中砲を相手にする場合は、どれか一つ自分の得意な布局を用意しておき、開局で大きく劣勢にならないようにしましょう。