前回の記事では開局の重要性や勉強法などを紹介しましたが、今回からはより具体的に開局について解説していきます!
まずはどの布局(定跡)にも共通する開局の基本的な考え方を、4つのポイントにまとめましたのでご覧ください!
車を戦線に出そう!
まず開局で重要なのが、車を戦線に出すということです。
初期配置の状況では、車は両端にいるため動こうと思っても上に2マスしか進めません。
しかももし車が上に動いた場合、すぐさま黒の砲で車の隣にいた馬が取られてしまいます。
つまり最初の状況では車はどこにも動けないんです。
シャンチー最強の駒である車が、盤の隅っこで大人しく待機していては非常にもったいないですよね。
なのでまずこの車を早めに戦線に移動させることが、開局で非常に重要になってきます。
具体的な車の使い方は大きく分けて2通り。
一つ目は「直車(ちょくしゃ)」と呼ばれる使い方で、横に一つ移動させる使い方です(画像の紅側)。
二つ目は「横車(おうしゃ)」と呼ばれる使い方で、一度一マス上に上がり、その後横に車を移動させる使い方です(画像の黒側)。
紅黒どちらの車も最初に比べ行動範囲が大きく広がったのが分かりますね。
ちなみに直車と横車はどちらも一長一短で、どちらが良いかは一概には言えません。
直車は横車より速く車を戦線に出せるのが魅力ですし、横車は一手余分にかかりますが直車より中央で車を使えますし、横にも柔軟に移動できるメリットがあります。
一応最近の傾向では、プロレベルの対局でも直車と横車のどちらにも出来る場合は直車を選んでいるケースが多いようです。
ただこのあたりは対局者の個性も影響してくるので、初心者の方はとりあえず直車と横車のどちらかで早めに車を戦線に出すということを意識しましょう。
馬の進路を確保しよう!
開局で車を戦線に出すことの次に大切なのが馬の進路の確保です。
馬は初期配置の状況から中央側と端側の2カ所に移動することができます。
そして中央側に上がった馬を「正馬」、端側に上がった馬を「辺馬」と呼びます。上の画像では、盤面右側は紅黒ともに正馬、左側はともに辺馬になっています。
正馬と辺馬ではより中央で使える正馬の方が良い形ですが、辺馬に比べ攻めの標的にされやすいという弱点もあります。
これは辺馬がもし取られても相手の駒を相・象で取り返せるのに比べ、正馬は取り返せる駒がなく不安定になりやすいという理由からです。
そして正馬・辺馬ともに共通するのが、このままではこれ以上前に進めないということ。
どちらも兵や卒が進路の邪魔をしていますね。
そこで馬の前にいる兵や卒を前に動かして、馬が前線に進めるようにします。
これが開局において重要な馬の進路の確保です。
これで馬は前に進むことができるようになりました!
また画像のように紅黒両者の馬が同じ列にいる場合、一方が進路を確保するため兵・卒を進めると、もう一方は取られてしまうため兵・卒を前に進められないという状況になります。
つまり先に兵・卒を進めた側は、自分の馬の進路の確保と相手の馬の進路の封鎖という2つを同時に達成することができ、まさに一石二鳥です。
馬は攻撃を組み立てる上でも重要な駒なので、開局では積極的に馬の進路を確保するようにしましょう。
王様(帥・将)は動かさない方がいい!
シャンチーの開局では、基本的に王様(帥・将)は動かさない方がいいです。
日本の将棋では「居玉は避けよ」という有名な格言があるように、序盤は王様を移動させてじっくり囲うことが多いですが、シャンチーは真逆です。
そもそも王様を囲うという概念はシャンチーにはありません。
ではなぜ王様を動かさない方が良いのでしょうか?
たとえば初手で帥が動いた手を見てみましょう。
まず帥が動いたことによって、2枚の士の進路が塞がってしまいました。
また帥と士との連携がなくなってしまい、もし士が取られても取り返す駒がありません。
つまり帥が移動したことによって、初期配置の状況より九宮の中の連携がかなり悪くなってしまいました。
そしてこの帥が上がった手にそれらのデメリットを払拭するだけの別の何か価値があるかというと、はっきり言って全くありません。
なので極端に言えば、百害あって一利なしという状態なのです。
もちろん状況次第では開局で王様(帥・将)を動かさざるを得ない状況もあるかと思いますが、そうでなければ間違いなく動かさない方がいいです。
それよりも車の移動や馬の進路確保のほうが、開局では何百倍も価値のある手になりますよ。
手損をしないようにしよう!
最後に開局で重要なのが、手損をしないということです。
手損とは、実質的な指し手の数が相手よりも少ない状態のことを言います。
例えば以下のような指し手を進めた結果、下の画像のような局面になりました。
- 砲二平六 馬8進7
- 砲六平三 馬2進3
- 砲三平五 卒3進1
どちらも3手指していますが、紅は初手で砲二平五とすれば1回でこの局面になるので、実質的には一手しか指していないのと同じです。
一方黒は自然な駒運びで、しっかり3手指しています。
つまりこの時点で紅が2手分手損していることになります。
今のは少し極端な例だったので、もう少し実戦でありそうな形で見てみましょう。
初手から
- 砲二平五 砲8平5
- 馬二進三 馬8進7
- 車一平二
と進んで、下の画像のようになりました。
そしてここから黒は車9平8と車を交換を挑み、車二進九、馬7退8と進んだのが下の画像です。
この局面までに、紅と黒はそれぞれ4手指しました。
しかし画像を見てみると、紅は砲二平五と馬二進三の2手分駒が動いていますが、黒は砲8平5の1手分しか駒が動いていません。
つまりこの時点で黒は1手分手損をしてしまっているということになります。
手損はその分自分の駒が相手より動かせていないということなので、必然的に戦力を前線に繰り出すのが遅れてしまいます。
そしてその結果相手に主導権を握られ、劣勢になってしまうことが多いんです。
なので開局ではできるだけ手損をしないよう気をつけて指すようにしましょう。