前回まで2回に渡って中砲系の布局を紹介しました。
今回からは非中砲系の布局について見ていきましょう!
仙人指路
仙人指路(せんにんしろ)は紅が初手で兵七進一(兵三進一)と指す布局のことを言います。
*左右対称なのでどちらでも同じですが、実戦例は兵七進一が多いので、当サイトではこちらに統一します。
この手は紅の左の馬の進路を先に確保した手で、中砲(砲二平五)ほど迫力はありませんが着実な一手です。
またそれと同時に、相手の出方をうかがっている様子見の意味合いもあります。
仙人指路では黒は紅が中砲の時と違い、普通の手であれば何を指してもすぐには悪くなりません。なので比較的自由に作戦を決めることができます。
そこで紅は相手の出方次第で自分の動きも決めようという指し方が仙人指路なのです。
少し大げさに言えば、紅は黒に対し「どんな手でも受けて立つ」と横綱相撲を宣言したような感じですね。
実はこの仙人指路は中砲の次に多い指し方で、プロの実戦でも良く現れます。
ただ相手の出方に合わせて指すのはそれ相応の実力がいるため、強い人ほど採用率が高いといった印象です。
また仙人指路は初手の兵七進一(兵三進一)のことを指すので、もちろんその後の展開次第では前回紹介した中砲系の布局や、今後紹介する飛相局の布局に合流することもあります。
なので具体的に仙人指路からどんな布局になるかは、その後の指し方を見ないと分かりません。
ここでは、仙人指路特有の布局である「仙人指路対卒底砲(そつていほう)」の実戦例の多い進行を一つ紹介したいと思います。
- 兵七進一 砲2平3
- 砲二平五 象3進5
- 馬二進三 卒3進1
- 車一平二 卒3進1
- 馬八進九 車9進1
- 車九平八 車9平4
一見すると黒の卒が兵を取って河を渡っているので黒優勢に見えますね。
しかし実際には、紅は黒より駒の出がいい(特に馬は紅だけ動いている)ので、形勢としてはほぼ互角です。
また皆さんの中には、そもそも4回合の時になんで紅は兵で卒を取らなかったかと疑問に思う人もいるかもしれません。しかし実はこれは大きな罠で、取ると大変なことになってしまうのです。
下の画像が問題の局面ですね。
ここで紅が兵七進一と卒を取ると、黒の砲で相を取られてしまいます(砲2進7)。
相を取られるだけならまだしも、よく見るとこの手はジャンと車取りという強烈な両取りの一手になっているんです。
王様が一番大事なのでなくなくジャンを回避する(帥五進一か士六進五)しかないですが、砲3平1と車を取られて万事休す。
序盤早々シャンチー最強の駒である車を、なんの見返りもなくただで取られては勝負になりません。
なので先ほど示した実践例の多い手順は、こういう罠を避けるために兵七進一と卒を取らなかった(取れなかった)のです。
仙人指路は変化の多様性が魅力の布局で人気が高いですが、その分難しくあまり初心者向きではありません。
初心者の方は紅を持って仙人指路でどう指すかを考えるより、黒番のときに仙人指路を指されたらどう指すかを考えておいたほうが良いでしょう。
飛相局
飛相局(ひそうきょく)は紅が初手で相三進五(相七進五)と相を上げる布局のことです。
これも実戦例は相三進五のほうが圧倒的に多いので、こちらに統一して表記します。
飛相局は非常に守備的な布局です。
先に相の連携を良くして守りを強化しているので、黒に攻められても簡単には潰れないぞという戦い方になります。
仙人指路の場合と異なり紅は途中で中砲にすることもできないので、飛相局の布局には攻撃力があまりありません。
なので全体的にじっくりと戦う落ち着いた流れになりやすいのが特徴です。
この飛相局は中砲、仙人指路に次ぐ3番目に人気の高い指し方で、プロの実戦でもしばしば見かけます。
中砲の布局と違い古い歴史はありませんが、1960年代以降に中国史上最強の棋士「胡栄華(こえいか)」が採用したことで一気に発展した布局だそうです。
また飛相局に対しては黒も様々な対応ができるので、仙人指路と同様に非常に変化が多様な難しい布局になります。
ここでは黒が砲8平5と中砲で対抗する形の出だしを少し紹介します。
- 相三進五 砲8平5
- 馬二進三 馬8進7
- 車一平二 車9平8
- 馬八進七 馬2進1
- 兵三進一 砲2平4
- 車九平八 車1平2
- 士四進五 車2進4
黒は攻撃力の高い中砲で対抗しましたが、紅は初手で相が上がって事前に中央を手厚くしているので、一気に攻めることは難しそうです。そこで黒もじっくり指す指し方を選び、やや落ち着いた流れになったのが分かるかと思います。いかにも飛相局といった感じの出だしです。
形勢的には全くの五分なので、どちらが勝つかは今後の展開次第になります。
この飛相局は序盤を落ち着かせて中盤・終盤の力で勝負という布局なので、開局で積極的にリードを奪いたいという人にはあまりオススメできません。
また変化が多様でなおかつ紅がやや受け身になることから、あまり初心者向きとも言えないでしょう。
これもやはり初心者の方は紅で指すことより、黒番のときに紅に指されたらどうするかを少し考えておくくらいのほうが良いのではないかと思います。